浮気調査でまず基本となるのは、徒歩尾行だ。対象者を見失わず、気づかれず、尾行しなければならない。一定の距離をおき尾行を始める。対象者に気づかれないように注意深く尾行を続ける。徒歩尾行の際、対象者がどこへ向かっているかある程度予測する必要がある。駅方面か繁華街か浮気相手の勤務先もしくは、浮気相手の自宅方面かなど対象者が向かうと思われる場所を予測しておくことが尾行にとって重要なポイントとなる。
対象者を尾行していると警戒行動を取り始めるケースは少なくない。
密会するのだから警戒して当たり前の行為だ。そんな事は想定内で、対象者が振り向いたり、遠回りした場合は、それなりの対処を行う。まずは変装だ。メガネをかけたり、帽子を被ったりして対応する。しかし、人って一瞬振り返っても後方に誰がいたのか実は見えてはいない。
探偵自身がテストした事がある。後ろを振り向いても誰が背後に居たか把握できなかった。
例えば10メートル先の人物を把握するには振り返って立ち止まってみないと、背後の人間を確認できない。ではなぜ探偵は、変装するのか、それは探偵の心理的なものに関わってくる。
要は暗示だ。対象者が振り向いた、見られたかもしれないと思うと追えなくなる。だから帽子を被ったりメガネをかけたりして不安な感情を変装により払拭させていると言える。一旦対象者を警戒させたと思い始めたら失尾してしまう可能性が高まる。しかし、不思議なもので対象者を尾行しているときやけに警戒していたのに、対象者が浮気相手と接触した途端警戒がなくなる。二人になると会えたことが嬉しくて誰かに見られているんじゃないかという感情は薄れていくのかもしれない。
対象者が浮気相手と接触した後は、尾行がやり易い。正面からのツーショットも撮れるようになる。だが、対象者達のツーショットは簡単のようで以外と撮りづらいものだ。対象者達を先回りして撮らなければならない分、警戒させるリスクが高まる。あくまでもほしい映像は不貞の映像だ。
ツーショットが撮れても不貞の証拠を撮れなければ本末転倒だ。
尾行で重要なポイントの二つ目は、距離感。対象者と探偵の距離がバランスを崩すと大概失尾してしまう。人通りの多い場所では、対象者に接近していなければならない。でなければあっという間に対象者を見失ってしまう。逆に人通りが少ない場所では、かなり距離をおいて尾行しなければならない。しかし、あまりに距離をあけてしまうとこれまた対象者を見失う事になる。
この尾行の距離感は実践で培っていくしかないと探偵は思う。
最悪なケースで対象者はかなり激しく警戒していた。すると対象者は後ろ向きで歩く始めた。それをされたら探偵はお手上げだ。
