夜九時過ぎに私の携帯電話がなった。相手は大学病院からだった。「ご主人が脳梗塞で緊急搬送されて今治療中ですので至急病院に来てください」との事だった。私はあわてて化粧もせずにタクシーで病院へと向かった。
病院に着いたら夫の病名と治療方法の説明を受けた。医者は「発見が早く早期に治療できたので命に別状はないとおもいます。早期に対応出来て良かったです。」あそこに座っている女性が適切な対処をしてくれたお陰で後遺症も残らないとおもいますよ。と医者は言う。
あの女性とはどなたなのかお礼を言わなくてはと思い挨拶に向かった。「山下の妻です。主人を助けて頂いて本当にありがとうございました。」私は気持ちを込めて頭を下げた。「ところで夫はどこで倒れたんですか?職場ですか?飲食店ですか?」と尋ねると「私の部屋です。」と言いにくそうに答える女性。
「えっあなたの家に夫は行っていたってことですか」と私も言いにくそうに尋ねた。彼女は「はい」と頷いた。
私はピント来た。彼女は夫の愛人で、愛人宅で倒れた夫の命を助けてくれたことを。
私は怒りが込み上げてきたが感謝の気持ちも同時に込み上げてきた。
女性は「もう二度とご主人には会いません。ちょうど別れ話をしていた時にご主人は倒れてしまいました。愛人関係は終わっています。もし慰謝料請求されるのであるであればお支払します。」と淡々と話した。
私は混乱していた夫は浮気していた。その浮気相手の女性に命を助けられたの紛れもない事実だ。
慰謝料請求の件だが私は彼女の言葉を聞いて慰謝料請求する事はしないと彼女に伝え「もう大丈夫ですのでお帰りください」と彼女に伝ると彼女は深々と頭を下げて去っていった。
私は夫の回復を待った。一週間後夫は退院した。私は夫が無事に退院できたことを心のそこから喜んだ。
私は夫の浮気の事に対して一切触れなかった。
夫は一言「悪かった、迷惑をかけてごめん」と言ってくれたので私はこの先何があっても夫を支えていこうと心に決めたのだった。
