私があいつと愛人契約を結んだのは、かれこれ10年が経つ。私はあいつのプライベートまで私の型にはめてしまった。あいつには、俺以外の男性と接触するなと言ってある。その代わりに私はあいつに月50万を払っている。私はなんと独占的が強い男。
あいつを一人占めしたくてたまらず10年が経過した。それでも私の独占欲は変わらない、いや益々独占欲は強くなっている。
最近あいつの様子が変だ。電話にもでないときがある。今までなら直ぐに電話に出ていたはずだか最近は、あまり連絡がとれない。
私は怪しんだ。土曜日の夜に連絡もせずにあいつのマンションに行った。あいつのマンションだが俺があいつの為に買ったマンションだ。マンションに入っても彼女の姿はなかった。衣類も化粧道具も何もかもなかった。キッチンのテーブルに一枚の便箋があった。読んでみると「10年間本当にありがとう。夢のような時を過ごせて楽しかったわ。でもかごのとりは今日でおしまい。元気でね、ダーリン」と綺麗な字でかかれていた。
まー。確かにかごのとりと言われればそうだったのかもしれない。独占的で束縛が強すぎた。私の型にはめすぎた。かごのとりはもう二度と帰って来ないことを悟った。
私は自分の家に帰り、妻がお風呂沸いているわよと声をかけてくれたので風呂に入った。頭のなかではあいつの事で一杯だった。取り戻せるものなら力ずくでも取り返したい気分だ。あいつは一体どこに飛んで行ったのだろう。
風呂から上がり缶ビールを冷蔵庫からだしグラスに注ごうとした時、妻から思わぬものを渡された。離婚届けだ。私は慌てて缶ビールをリビングのテーブルにおき、まじまじと妻の顔みて「これはどういうつもりだ」と怒鳴るように言った。すると妻は至って冷静で「私は三年前から離婚しようと考えていたのよ。そんな驚く事じゃないわよね。胸に手を当てて良く考えてみてはいかがですか、飼ってらした小鳥もどこかに飛んで行ったみたいだし?」
「なんでそんなことはをお前が知ってるんだ」と私は取り乱してしまった。
「あら、私がここ数年何も知らなかったとでも思っているの?私は抜かりなく福岡の博多区にある探偵社に浮気調査を依頼したのよ。浮気の証拠ばっちりとれたわ。だから小鳥ちゃんにもあなたと別れるように言ったのよ。じゃないと慰謝料請求しますからねと行ったら直ぐに出ていきますって言ってマンションの鍵を私に預けていったわ。まー。滑稽な、話だわ。あなたは、これで独り身、いわゆる独身、悪く言えば熟年離婚、最悪孤独死ね。今まで好き勝手やってきた報いよ。」
私は返す言葉が見つからなかった。「孤独死」だけが頭から離れない。妻に家を出て行かれたら私は本当に一人になる。しかし、妻の決意は変わらないようだ。あいつに買い与えたマンションを売りこじんまりとしたマンションを西区辺りで買うそうだ。私と離婚してどう生きていくかは決めているそうだ。私は多額の慰謝料を払い財産分与をしてこの広いマンションに、ひとりぼっちになった。ひとりぼっちの夜の闇がこんなに恐ろしいものだとは知らなかった。
