毎日毎日夫の帰りを待つ日々に嫌気がさしてきた。寂しくて心が潰されそうだ。毎晩深夜過ぎに帰宅する夫を待つ必要があるのかとふと思い始めた。馬鹿らしくなったのだ。私も夜遊びに行こうと思った。夜遊びしたい訳ではないがただ夫の帰りを待つのに疲れはてたのだ。よし飲みに行こうと決めた私は少しおしゃれをして派手な口紅をあてた。さてどこにいけばいいのか悩んだ。日頃夜遊びなんかしたことない私は何をしていいのか迷ってしまった。とりあえず駅の方には向かい居酒屋でハイボールを注文し、一人でのんだ。4杯ハイボールを呑んでも一向に酔わない。そして一人で呑んでも全く面白くなかった。私は会計を済ませて居酒屋を出て駅周辺をふらついた。すると若い男性が声をかけてきた。「よかったらうちの店で一緒に呑みませんか、初回のお客様は一時間千円で呑めますから是非一緒に呑みましょう」と少しオダギリジョーに似た色気のある男性が誘ってきた。一時間千円ならいいかと軽い気持ちで彼の店に行くことにした。店内に入ると男性スタッフが何人かの女性とお酒を飲みながら楽しそうにしていた。「あっここはホストクラブだ」とすぐに気付いた。少し怖くなったが一時間だけのんで帰れろうと思っているとボックス席に誘導され、私はボックス席に座った。「何を呑まれますか」と輝く笑顔で聞いてくるイケメンくん。私はウイスキーのロックを注文し、イケメンくんと乾杯した。話し上手な彼は私の心を軽くした。「綺麗な方ですね。つい見とれちゃいます」と歯がうきそうなセリフを言うイケメンくん。こんな中年のおばさんにそんなリップサービスは無用よと思いながらも普段いわれなれていない私は誉められて、照れ臭くもあり嬉しくもあった。あっという間に一時間がたった。夫の帰りも気になったので、私は一時間でお店を出た。「また一緒に呑みましょう」と元気よく見送るイケメンくん。私は軽く手をふって別れた。少し酔った私はホストクラブでのことを思いだしながら帰宅した。「またいきたいと素直に思った。誉められるのは悪くない」とにやつきながら思った。帰宅するとやはり夫はまだ帰ってきてなかった。少しホットした。夫が帰宅していたらこんな時間までどこで何をしていたんだと責められたに違いない。私は少し酔ったので夫を待たずに先に寝た。
次の夜も夫は帰宅が遅い。私は躊躇わずにイケメンくんに会いに行った。彼は誉め上手で私を気分よくさせてくれた。完全に私はイケメンくんにはまり始めていた。気付いたら私は一週間でま20万も使ってしまった。やさぐれていた私の心が癒されたなら安いものだと思ったが、使いすぎだとも思った。ある夜帰宅しない夫を良いことにいつものようにイケメンくんに会いに行った。私は少し飲み過ぎたせいで一時半頃帰宅した。すると夫は帰宅しており、仁王立ちで廊下に立っていた。私は酔っていたので「あら今夜は早いご帰宅ね」と言いながら廊下に立っているの夫を払いながらリビングのソファーにドンと座った。「お前こんな時間迄になにしてんだ」と怒り狂って言いよって来た。私は「友達と居酒屋で呑んでたのよ」と少しろれつが回らなく答えた。「こんな時間まで誰と呑んだんだ」と今度は冷静に聞いてきた夫。「毎晩帰宅が遅いあなたには言われたくないわ。浮気でもしてるんでしょう?私は分かってるんだから」と夫に怒りをぶつけた。夫は「バカいうな!俺は仕事してんだ。最近会社全体のパソコンの不具合がおきて復旧に時間をとられ帰宅が遅いだけだ。何が浮気だ!そんなに疑うなら探偵に浮気調査でも依頼すればいいだろう」とシリアスに言う。
私は夫の言葉に嘘はないと思った。寂しさ紛れにホストクラブに通っていたなんて口が避けても言えない。しかも50万近く浪費したことは内緒にしなければならないと首を振りながら思った。「たまには早く帰って来て外で食事位してよ」と寂しさを込めて夫言うと夫はもうすぐ仕事が落ち着くからそしたら何か美味しいものでも一緒に食べに行こうと言ってくれた。私は嬉しくて涙が溢れた。夫よごめんなさい。そしてイケメンくんさようならと言葉に出さずに言った。
