窓越しに庭を眺めていたら痩せた黒猫が歩いていた。きっと野良猫だろう。餌を求めて歩き続けているのか。猫は自由奔放で羨ましい。野良猫でも自由な生き方が出来るのだろう。私は自由に生きている猫をみて私も猫になりたいと思った。仮に野良猫でも。しかし、猫は猫で悩みがあるだろうと思う。縄張り争いや食べ物争いなど他の猫と喧嘩になる時だってある。家で飼われている猫は自由奔放に生きられるだろう。飼い主のご主人様がさぞ可愛がってくれるだろう。そんな事を想像していたらもう夕方になっていた。
私は近くのスーパーへ買い物へ出かけた。今夜は、おでんにしようと材料を買った。鍋物は作るのが簡単で、家事にやる気がない私には好都合だ。
私は最近、家事に育児にやる気がない。どこか遠くへ行きたい。だが行けるはずがない、食事の支度、掃除、子供の世話。私には自由がないのだ。
そんな気持ちになったのは数週間前からだ。夫の携帯を私は見てしまった。何か怪しいと女の勘が働いた。見てはいけないと思っても見ずにはいられなかった。夫がお風呂に入っている間に夫の携帯をチョックしてしまった。
夫のラインには一人の女性と頻繁にラインをしていた。内容は、また食事行きましょう。今度泊まりで温泉へいきましょう。など、ラインから夫は浮気をしている事が明らかになった。それ以降私はこの家から出ていきたくなった。子供がいなければとっくに出て行っている。子供だけには迷惑をかけたくない。
私は自分の人生を子供に捧げることは苦にならない。しかし、浮気している夫に寄り添う事など出来るはずがない。しかしながら私はこの家で夫と暮らしていかなければならない。不甲斐ない思いだ。
朝新聞を取りに行き、何気に新聞チラシを見ていたら探偵のチラシが入っていた。私はこれだ。と思った。探偵に相談すれば現状を変えられるかもしれないと思い、夫に気づかれないよう、さっきと探偵のチラシをエプロンのポケットに入れた。
私は早速探偵社に電話をして、夫が数週間前から浮気している。夫の携帯を見たから間違いないと伝えると、探偵はご主人の勤務後の調査をしてみませんか?と提案されたので、私は探偵にお任せします。と答え、調査には、委託契約が必要です。契約に相談室に来れますか?と言うことだったので、私は相談室へ出向き、夫の顔写真と夫が使っている鞄の写真を探偵に渡した。
私は後は宜しくお願いします。と言って家に帰った。
窓越しに庭を眺めていたらまたあの黒猫が庭を歩いていた。一体どこに行っているのだろう。私には知る余地はなかった。
浮気調査を依頼して10日後探偵から連絡入った。報告をしたいので相談室に来てください。と言われたので夕方に相談室に出向いた。調査結果はやはり夫は浮気をしていた。しかし、浮気相手はキャバクラで勤めている女性だということだった。もう少し調査しないと浮気しいるとは確定できないのです。同伴もしくは、アフターだとすれば、一緒に食事しても不貞行為とは言えません。と探偵は苦い顔をして言った。浮気相手と一泊で旅行に行ったりすれば不貞行為としてみなされると思います。それを聞いて確かラインで今度温泉に連れてってほしいと書いてあった事を思い出した。だが私は夫がキャバクラ通いで無駄遣いしていることがわかっただけで気持ちが少し晴れた。キャバクラの女くらいなんだと思ったのだ。浮気調査は終了してもらい、私は家に帰り、夕飯の支度をしながら夫とどう話すか、考えていた。
夫は珍しく7時前に帰ってきた。危険を感知するかのように。
私は子供が寝てから夫をキッチンに呼んだ。あなた、最近家計が苦しいのに外食が多いみたいだけどなんで?
私は少しずつ夫を追い詰めることにした。夫は何くわぬ顔で付き合いだよ。と言う。誰と外食行ってるの?会社の人?誰と行っているのか言いなさいよ。夫は機嫌を悪くして会社の同僚だ。と吐き捨てるように言った。私は逆ギレした夫に頭に来て、探偵から撮ってもらった写真を夫に投げつけた。何が同僚よ。キャバクラの女に入れあげてるだけじゃない。今度は温泉にでも行くつもりでしょ?どうなのよ!夫は慌てて写真をみていた。夫は黙り込んだ。
家計が苦しいのによくキャバクラの女に入れあげられるわよね。私は食費を切り詰め、買いたい服も我慢しているのに、何がキャバクラよ。と言いたい事を全部夫にぶちまけた。夫は下を向いたまま微動だにもしない。私は夫の財布からクレジットカードを取り上げて現金3000円だけ入れて財布を夫に投げつけた。夫は3000円?これだけ?と言わんばかりの顔をして私を見た。私は当然よと言ってお風呂に入ることにした。
これで夫のキャバクラ通いは出来なくなると思うと気が晴れた。湯船に浸かるとつい鼻歌が出てしまった。そして何故かあの痩せた黒猫の事を思い出していた。
