時刻は夜に11時を回っていた。私は溜まっている映像の編集を事務所で行っているとフリーダイアルが鳴り響いた。集中して編集をしていたのでフリーダイアルの着信音に私はドキッとして慌てて受話器をとった。
電話の相手は女性だった。深夜の相談は久しぶりだったので戸惑いながら相談者の話を聞いた。相談者は落ち着いた声で申し訳なさうに話し始めた。
相談内容は夫の浮気調査の相談だった。ご主人はキャバクラの店長をしているとのこと。キャバクラは一時までの営業で帰宅は大体二時半位なのだが最近は頻繁に朝帰りか帰宅しない時があるので浮気を疑っている様子だった。
私は状況を把握した上で調査方針の提案を行った。調査方法はいたってシンプルなものでご主人の勤務後の素行を見てみましょうという提案を行った。
相談者は私の提案に納得したようでご主人の浮気調査の依頼をすることとなった。後日相談室にきてもらい夫の浮気調査の委託契約書を交わし調査に着手した。
まずは対象者が勤務しているキャバクラに内定を行い対象者の容姿を確認するとともにキャバ嬢と顔も確認した。探偵についたキャストはなかなかの美人さんで内定中にも関わらず話が盛り上ってしまった。
キャバ嬢の顔を確認することはこの案件では重要なことだ。何故なら店長やボーイがキャバ嬢と恋仲になることは珍しくないからだ。しかしそれはキャバクラ業界ではご法度なことだ。
探偵は一時間内定を行い対象者とキャバ嬢の顔を確認した。探偵は店が閉店になるのを待ち、いつでも尾行出来るよう身構えた。一時半過ぎに店長が店から出て近くのセブンイレブンに入ったのを確認した。探偵はセブンイレブンの中が目視できる場所で張り込んだ。しばらくすると一人女性がセブンイレブンに入ってきた。よく顔見ると探偵のテーブルついたあのキャバ嬢だった。二人は仲良くセブンイレブンで買い物をして、店内で軽いキスをした。勿論そのキスシーンもすかさず撮った。
探偵は二人が買い物をしてどこに行くのか尾行を開始した。予想は的中、二人はマンションに入って行った。おそらく女の住んでいるマンションだと思う。それは後日調べるとして、対象者がそのマンションに出入りする映像を撮ることに専念した。対象者は女の家に入り浸りだった。
調査結果を依頼人に報告するとやっぱりかと言わんばかりの顔で報告を黙って聞いていた。ほうづえをついた依頼人は、これからどうすればいいのか悩んでいるようだった。離婚するかもしくはお店のオーナーに店長はキャバ嬢と恋仲になっていると告げ口するか、そうすれば夫は店を首になり、生活が苦しくなる。八方塞がりとはこの事だ。浮気している夫に浮気の証拠を叩きつけて女と別れさせることも考えたが遊び好きの夫はどうせ舌の根も乾かない内にまた遊ぶに違いない。そう思うと私は離婚するほかに手だてがないと思い離婚を決断した。もう女癖の悪い男は懲り懲りだ。と愚痴をこぼし相談室をあとにした。探偵は思った。店長たるものが店の女に手を出すとはプロ意識にかけてると。こんな男は別れて正解だと思うのだった。
