きっと妻は勘ずいている。私が浮気をしていることを…。しかし、妻は私に問い詰めたり、責めたてたりはしない。なんか不気味だ。遅く帰宅しても怒ることなく逆に労いの言葉をかけてくる。出張と言うなの不倫旅行も疑うことなく「気をつけて行って来てね。おみやげなんか要らないから。」と優しく送り出してくれる。妻の態度をみているともしかしたら浮気はばれていないのかもと思い直してしまう。
嵐の前の静けさと言えばそうなのかもしれない。妻はやけに優しい。私の気の回しすぎかと思うほど妻の態度は優しいのだ。私が後ろめたい事をしているからそう感じるのかわからないがやはり気味が悪い。悪い予感がする。
私の悪い予感が的中したのは出張といった不倫旅行から帰ってきた3日後だった。なんと妻は探偵に浮気調査を1ヶ月前から依頼していた。だから妻はわざと優しく私に接していたのだ。その方が浮気調査がうまく進む。そうすれば浮気現場が取りやすくなる。そのための工作だったのだ。
お掛けで、私の浮気の証拠はばっちり撮られていた。妻は私への怒りを抑えすべて浮気の証拠の為に我慢していたのだ。まるで女優並の演技だ。私の嫌な勘はやはり当たった。私の勘が当たったところで既に遅い。嫌な勘がするんだったら不倫旅行なんかいかなければ良かったんだ。
妻はリビングに呼びお茶を出してくれた。私はお茶を飲みながら妻の話を待った。妻は一息ついて話を始めた。「私は浮気調査を探偵に依頼しました。それは浮気の証拠が欲しかったからです。私はこの浮気の証拠を使ってあなたとの浮気相手の女性に慰謝料請求をします。そして私はこの家を売って財産分与をしてあなたとの結婚生活に終止符を打ちます。私にもこれからの人生があります。浮気症のあなたとこの先一緒に老いていくつもりはあらません。」「ちょっと待ってくれよ。俺の言い分も聞いてくれよ。一方的じゃ困るよ。」夫は私の強い意思に気づいていないようだ。「私はこれからの自分の人生を考えていきます。あなたのこれからのことなど全く考えていません。私は幸せになるためにあなたと一緒になりました。今はあなたは私を不幸にしている。お認めにならなくて結構です。私の意思は変わりません。この家も買い手がついております。あなたも早いうちに新居を見つけてください。あら余計なお世話でしたね。浮気相手の女性の家に転がり込めばいい話だったわね。」
そう言って妻は私の前から消えた。私はとりあえず浮気相手の女性の家に身を置き浮気相手との生活が始まった。
しかし、愛人は所詮愛人だ。愛人との生活は長くは続かなかった。私は60歳を越えて一人身になった。私は恐ろしく寂しさに襲われた。
