私は子供の頃から、人のものが欲しくなっていた。姉が持っている人形や、カチューシャなど、姉が持っているものを欲しがった。姉はしかめっ面をしながら渋々私に人形を渡した事を鮮明に覚えている。私の悪いくせだ。
しかし、その癖は、大人になっても変わる事はなかった。特に恋愛に関しては、酷いものだった。友人の彼氏を好きになってしまった。勿論友人とは、それ以降不仲になってしまった。そんな辛い思いをしても、私は他人のものが欲しくなるのだ。
私は禁断の恋に落ちた。相手は既婚者。また私は妻子持ちの上司を好きになってしまった。どうやら私は愛人気質なのかも知れない。いや、間違いなく愛人気質だ。以前も既婚者の人を好きになってしまったが、別れは意外と早いものだった。しかし、今回の恋はかなり真剣な思いを抱いている。既婚者なんかどうでもいい。私は上司の彼を真面目に好きになったのだ。
彼の奥様には、後ろめたさがあるし、嫉妬心は抑えてきた。愛人らしく振る舞ってきた。あまり帰りが遅くならないよう気を使ってきた。もっと一緒にいたいといつも思っているが、もし奥様に私との関係が、バレたらきっと奥様も彼も嫌な思いをするだろう。私は彼と一緒に居れる時間が幸せだった。彼に夢中なった。心底彼を愛しているのだ。
この時は、まだ知らなかった。これから起こる災難が起こることを。
最近、私は嫌な予感がする。誰かにつけられているような気がする。気のせいかもしれないが、勤務後、家に帰る道中、誰かに見られているように感じる。なんだか薄気味悪い。
もしかしたら、彼の奥様が、探偵に浮気調査を依頼したのかも知れないと思うとあり得ない話ではないと思った。愛人生活が半年も続けば、奥様が彼を疑うのは当然だと思う。最近私は彼と一緒に居る時間が長くなっている。奥様が探偵に浮気調査を依頼していない事を願った。もし浮気調査をされたら浮気の証拠はすぐに撮られてしまうだろう。頻繁に会い過ぎているのはわかっているが、私は彼と一緒にいたい、彼も私と一緒にいたいと言ってくれる。私達は、禁断の恋に完全にハマってしまった。二人して盲目になっていた。
ある日の日曜日の午前中、私の家のインターファンが鳴った。日曜日に誰だろうと思い、インターフォンの画面を見ると知らない女性が立っていた。私は直感で彼の奥様だと思った。居留守を使おうかと思ったが、逃げる事はしたくなかった。私は彼の奥様を家にあげた。奥様は用意したスリッパを履かずにズカズカとリビングへと向かった。
私は、奥様の顔を見る事が出来なかった。奥様は冷静な振る舞いで、黙って示談書を私に渡した。その内容は、見なくてもわかった。私は浮気がバレた事をすぐにわかった。とりあえず、示談書を見たら慰謝料200万と書かれていた。流石に200万は高いと思ったが、弁明の余地はなかった。私は申し訳ないありませんと小声で言いながら、示談書にサインした。奥様は、一言、私の夫に二度とちょっかいは出さないでくださいね。またちょっかい出したら、また探偵を雇って浮気調査をしてもらいますからね。と怒りを抑えながら言った。
私は禁断の恋に終止符を打った。もう二度彼には会わない。そう誓った。でも私はまた既婚者に惹かれてしまうだろう。だって私は愛人気質なのだから。
