事務所の片隅でひたすらデータの打ち込みをするのが私の仕事だ。ただひたすらデータを打ち込むのだ。地味な作業だが私の性分にはあっている。私の性格は内向的で、地味な女だ。そんな私は会社では目立たない存在だ。また、それを望んでいる。目立つのが苦手だからだ。
そんな私に営業部長だけはなぜか毎日話しかけてくる。「おはよう。お疲れ様。コーヒーでも飲まない」なんて声をかけてくれる。仕事中言葉を発することがあまりない私には部長との会話が唯一の楽しみというか癒しになって来ている。
私は部長の存在を気にしてしまい仕事に集中出来ないことがしばしばある。しかし、相変わらず地味な仕事をこなしている。そんなある日「今から夕飯でも食べに行かないか」と就業時間が過ぎた頃部長が食事に行かないかとのお誘いが来た。どうせ自宅に帰ってもは一人だし、部長には少し興味を持っていたから少し迷ったが一緒に食事に行く事にした。
勿論部長は既婚者だ。あくまでも一緒に食事に行くだけだが人と食事に行くことなんか不馴れで緊張してしまった。そんな私を部長は察したのか巧みに会話を弾ませた。好きな俳優や映画の話など、お酒も入りいつもより私のテンションは上がっていった。二人でワイン二本開けた頃部長が唐突に「ホテルに行こう」と言い出した。私は酔っていたからかこばまなかった。私は不倫の渦にのまれていく感覚に陥った。内向的でねくらな私をホテルに誘ってくれるなんて夢のようだった。私は部長に身を任せた。この先どうなるかなんてどうでもよくなっていた。たとえ部長の奥様が福岡の探偵社に浮気調査を依頼されても私は構わない。私はもう、一人の人生に嫌気がさしていたのだ。
私は部長と刺激的な生活を送ることにした。浮気がばれた時はその時はその時だ。あの暗い部屋で静かに生活するくらいならリスクはあるが刺激的な生活を私は求めた。
