私の夫は、天然パーマだ。
それが夫のコンプレックスでもある。朝起きると必ず髪を洗い寝癖を直す。それは毎日の習慣なのです。それをやらなければ罰でも受けるかのようにその儀式は、毎日休みの日でも続くのです。
縮れた髪をドライヤーで真っ直ぐにしてまずはジェルで固めます。たっぷり使用するお陰で整髪料は、一週間に一回購入するほど使用している。セットの最後にスプレーで髪を固める。大量にスプレーを頭のふりかけるお陰でスプレーで洗面所は、真っ白になります。私は毎朝それを見てこっそり笑っています。
これほどまでに夫は、髪型に気を使います。会社に出勤して、帰宅するまで髪型は、一本も乱れずに帰宅するのです。
そんなある日帰宅した夫の髪が乱れていたのだ。夫は、黙ってシャワーを浴びたのだ。私が疑いを抱くのは当然のことだ。なぜあれほど髪型に気を使う夫の髪型が乱れていたのか?風にも負けないあの髪型が乱れていたのか。
髪が乱れて帰宅したのが三度目の時、私は、夫に問いかけた。なぜ髪が乱れて帰ってきているのか。なぜ乱れているのか。どこでなにしていたのか?と。
夫は、なにも答えなかった。答えられなかったのだろう。何か話せばボロが出ることを予めわかっていたのだから。木彫りの熊の置物のように夫は、黙って座りこんでいた。
私は、夫が何をしているのか気になって仕方がなかった。くよくよするのは嫌いだ。知るすべは知っていた。夫の素行調査を探偵に迷わず依頼した。
結果は、予想通りだった。私は、なぜか悲しむことはなかった。それは、彼には浮気相手の女性がお似合いに見えたからかもしれない。
そして、私は二度と彼の朝の儀式を見ることはなかった。
