私の夫は、大柄な男だ。そして酒を愛する人だ。毎日酒を呑む。酒は決まって芋焼酎だった。五号瓶を毎晩欠かさず呑んでいる、しかし酔っ払っている姿をあまり見たことがない。酒に強い体質なんだと思う。たまに夫は、酔っ払ったというが、私はそうは見えなかった。普通に会話もしているし、暴れたり、笑ったり、泣きじゃくったりすることはなかった。まるで水でも呑んでいるかのように呑む。
最近、夫は家で飲むことが少なくなった。接待が増えて外で呑む機会が増え、帰りが遅くなっているそうだ。接待なら仕方ないかと思い夫の帰りを待っ日々が続いていった。
そんなある晩夫は、上機嫌で帰宅した。時は、深夜2時を回っていた。「あなたこんな時間までどこで飲んでたの」と私は尋ねた。口調は嫌みたらしく言ってやった。「接待」だと答えただけで酔ったからもう寝ちゃいます。といってベッドに横になった。スーツのまま横になった夫をみて、明日シワになるなあと思いつつ不機嫌だった私は、知らぬ顔して放っておいた。
こんな生活が1ヶ月程続いた頃、朝起きてきた夫に私は尋ねた。「こんな毎晩どこの誰とどこで接待しているのよ」「接待は接待だ、会社関係と中洲で会食があるんだ」と私の顔見ずに答えた。毎晩深夜までのみ歩く接待なんか聞いたことがない。せいぜい夜11時には、お開きになると思う。中洲のクラブでさえ深夜0時には、閉店すると聞いたことがある。キャバクラでさえいまは、深夜1時には、閉店するというではないか。夫の行動は、かなり怪しい。何でも接待と言えばことが丸く収まるとでも思っているのか。もしそうなら大きな勘違いだ、妻である私への侮辱に値する。気持ちはだんだん悶々としてきて。真相を明らかにしてやるぞっという感情が沸いてきた。
夫は、本当に接待で遅くなっているのか、疑いが止まらない。怪しいことは事実だ。こんな悶々とした状況が続くかと考えると胃の奥がざわついた。しばらく考えた結果、福岡の探偵に夫の素行調査を依頼した。調査回数は、月曜日、水曜日、金曜日の三回。勤務先から帰宅までの調査を依頼した。夫は、勤務先をでて同僚と居酒屋に寄り晩飯を食べ、同僚とは、その居酒屋で別れ、一人で中洲川端の方向へ歩いていった。中洲川端にあるゴールデンというなのスナックに入って行ったと探偵から報告を受けた。私は、内定調査を依頼した。福岡の探偵は、調査最終日の金曜日に、内定調査を行うと快諾してくれた。夫は一人でゴールデンという場末のスナックに夜な夜な通っていることが判明した。私は、嘆いた。何が接待だ、欲にかられて遊んでいただけじゃないか。ふざけてる。何か仕返しさそないと気持ちが収まらない。しかし何をすれば良いかわからない。またも私は、嘆いた。福岡の探偵の内定調査で明らかになったことが、もうひとつあった。お目当て女性が居たということだ。その女性は店のママさんだった。店のママにいれあげていたのだ。夫は、酒に溺れず女に溺れていたということだ。
私は月曜日の夜11時ゴールデンに電話をして、夫を呼び出した。夫は、不思議そうに電話にでた「えっもしもし」私は名乗らす「接待ご苦労様です。」と言って夫の対応を待った。夫は慌てた様子で「何で君が電話してくるんだ」と焦りは隠せてはいなかった。「12時までに帰って来なかったら離婚するわ」と言って電話を切った。少しだけ胸がスーとしたのを感じた。
夫は、11時半過ぎに帰宅した。私は、ソファーに座ったまま何も言わなかった。すると夫の方から、ご機嫌とりのように近づき「なぜあの場所がわかったんだと」不思議そうに尋ねた。「ママ友のネットワークを甘く見ないで」と答えといた。探偵に素行調査45万で依頼したことは、私だけの秘密にしとかなきゃ!
